瑜伽寺は、山梨県笛吹市八代町永井に位置する歴史ある寺院です。現在は臨済宗向嶽寺派に属し、本尊は薬師如来です。その歴史と文化財は、地域の信仰と文化を象徴する重要な役割を果たしています。
瑜伽寺の山号は「無碍山」(むげさん)といい、大善寺(甲州市勝沼町)や長谷寺とともに「三薬師」の一つとして知られています。また、境内には江戸時代前期に建造された薬師堂があり、歴史的価値が高いとされています。
山梨県笛吹市八代町永井に位置するこの寺院は、甲府盆地東部の笛吹川支流である浅川の扇状地上に立地しています。この地域は律令制時代の甲斐国の中心地であり、古代からの歴史的背景を持つ土地です。
瑜伽寺は奈良時代の霊亀元年(715年)に無音律師によって創建されました。本尊である薬師如来像は、この地に出現したものを祀ったと伝えられています。この寺院は、古代甲斐国において有力豪族が創建した官寺であると考えられています。
寺院創建当初の本尊であった塑造薬師三尊像(薬師如来坐像と両脇侍像)は、7世紀後半から8世紀に制作されたものであり、一部が東京国立博物館に所蔵されています。この像は、古代甲斐における仏教文化を象徴する重要な遺産です。
中世に瑜伽寺は禅宗寺院に改宗されました。現在の薬師堂は江戸時代前期に建てられたもので、寄棟造の仏堂としてその美しい建築様式を保っています。
1992年には、山梨県埋蔵文化財センターによる発掘調査が実施されました。この調査で発見された瓦や土器などの出土品は、古代から平安時代にかけての瑜伽寺の歴史を明らかにする重要な資料となっています。これらの出土品は現在、山梨県埋蔵文化財センターに所蔵されています。
1998年に山梨県指定文化財に登録されたこの像は、平安時代に制作された檜材の一木造です。高さ84.5センチメートルのこの像は、かつて塔頭大日庵に安置されており、近世には大日如来像として信仰を集めていました。
鎌倉時代に制作された十二神将像は、薬師如来像の両脇に安置されています。これらの像は南都系仏師によるものとされ、彫眼や彩色が施されています。2009年から2012年にかけて修復作業が行われ、近世の彩色が除去されました。
瑜伽寺が位置する八代町永井は、古代甲斐国の中心地であった八代郡に属しており、周辺には甲斐国分寺や寺本廃寺などの古代遺跡があります。また、甲州市の雲峰寺や笛吹市の福光園寺なども関連寺院として知られています。
瑜伽寺は、奈良時代から続く長い歴史と多くの文化財を持つ寺院です。その歴史や文化的価値は、地域だけでなく全国的にも注目されています。訪れる際には、その歴史を感じながら境内を散策することで、古代からの信仰と文化に触れることができます。