トンネルワインカーヴは、山梨県甲州市勝沼町に位置する、旧深沢トンネルを活用したワイン貯蔵施設です。「カーヴ」はフランス語で「貯蔵庫」を意味します。この施設は、甲州市が誇るワイン文化の一端を担う重要な観光スポットです。
深沢トンネルは、隣接する大日影トンネルと同様に、1902年(明治35年)に貫通し、翌1903年(明治36年)に中央線が甲府まで開通しました。この中央線の開通により、勝沼のぶどうとワイン産業は飛躍的な発展を遂げました。
トンネルは1997年(平成9年)に新深沢第2トンネルが開通するまで使用され、その後、文化財としての価値が認められ、土木学会選奨土木遺産や経済産業省の近代化産業遺産に指定されました。
旧深沢トンネルは、全長1,104メートルのレンガ造りで、2005年(平成17年)5月にワインカーヴとして開設されました。トンネル内部は、年間を通じて安定した温度と湿度を保ち、特にワインの貯蔵に最適な環境を提供しています。
気温: 冬場は14〜15℃、夏場は17〜18℃ 湿度: 60〜65%(湿度は調整されているが、温度調節は行っていない)
案内所に申し込むことで、一般客も見学が可能ですが、通常は入口から数十メートルまでの範囲に限られます。トンネルの奥へ進むには、契約者または契約しているワイナリーの案内が必要です。
トンネル内には特殊なフォークリフトが配置されており、細長いトンネルの壁沿いに並ぶワイン棚へのワインの出し入れに活用されています。
勝沼ぶどう郷駅から大日影トンネル遊歩道を通り抜けることで到達できます。ただし、大日影トンネル遊歩道が閉鎖されている場合は、別ルートを利用する必要があります。
トンネル内部は、レンガ造りのアーチ型構造で、気密性が高く安定した気候を提供します。この特性が、ワイン貯蔵に理想的な条件を作り出しています。
トンネルと大日影トンネル遊歩道の間には深沢川が流れており、ここでは河川用のレンガトンネルを見ることができます。このトンネルは、深沢トンネル建設時に谷を埋めるための土が川をせき止めないよう設けられたものです。
中央線の車内から、新大日影トンネルと新深沢トンネルの間で、このレンガトンネルを一瞬だけ見ることができます。
トンネルワインカーヴは、甲州市のワイン文化を象徴する存在であり、その歴史的背景や建築技術は訪れる人々に感銘を与えます。また、勝沼のワイン産業の発展を支えてきた重要な施設として、地元の誇りとなっています。
カーヴは通常施錠されていますが、特別なイベント時には内部見学が可能です。地元のワインツーリズムや祭りに合わせて訪問すると、普段は見ることのできない施設内部を楽しむことができます。