山梨県笛吹市八代町南に位置する定林寺は、日蓮宗の寺院として知られています。 山号は慧光山、旧本山は身延山久遠寺です。特に安産祈願や子育て祈願で多くの参拝者を集めており、 笛吹市指定文化財に指定された山門も見どころの一つです。
鎌倉時代の文永年間、日蓮大聖人が直弟子の日朗と日向を従えて甲斐国を巡った際、 八代の里に一夜を過ごしました。その夜、日蓮大聖人は地蔵堂に宿泊し、当地の塚に関わる因縁話を聞きました。
その因縁話によれば、平安時代末期の富士川の戦いで敗れた平祐成の側室・白菊御前がこの地で悲劇的な最期を遂げ、 村人たちに供養されることなく年月が経過していました。この影響で村には災害や疫病が続き、かつて栄えた村は荒廃してしまったといいます。
日蓮大聖人は村の悲惨な状況を憂い、法華経「如来寿量品」を唱えて母子を供養しました。 その夜、白菊御前の霊が赤子二人を伴い、大聖人の前に現れ感謝を述べました。 大聖人はこれを受けて「二子鬼子母神」の尊号を授け、彼女が女人の守護神としてこの地に留まることを約束しました。
以後、この供養をきっかけに定林寺が誕生しました。日蓮大聖人の弟子となった早内左衛門が自身の邸宅を寺として献上し、 慧光山定林寺が開かれました。この寺は、安産や子育ての霊験が顕著であることで広く知られるようになりました。
現在の本堂は平成10年(1998年)に再建されたもので、伝統と近代の調和が美しく保たれています。
昭和56年(1981年)に建立された五重塔は、日蓮宗の一般寺院では唯一の五重塔です。 同じく五重塔がある寺院としては、身延山久遠寺や池上本門寺などが挙げられます。
祖師堂は元々日蓮大聖人が宿泊した地蔵堂であり、「延命地蔵菩薩」と「二子鬼子母神」が安置されています。 二子堂は特に安産祈願の象徴として参拝者に親しまれています。
室町時代に建築された二天門(山門)は、笛吹市指定文化財として保存されています。 その荘厳な姿は、寺院全体の歴史を物語っています。
定林寺には観音堂や稲荷社もあり、多くの参拝者によりその信仰が守られています。
江戸時代には徳川将軍家の祈祷所としての役割を果たしていました。 寺院の各所に見られる葵の御紋は、定林寺が徳川家との深い繋がりを持っていたことを示しています。
定林寺へのアクセスは次の通りです:
定林寺は、日蓮大聖人の教えを今に伝える歴史ある寺院であり、その壮大な伽藍と深い由緒に魅了されます。 特に安産祈願や子育て祈願を求める人々にとって重要な霊場です。山梨県を訪れる際は、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。