西沢渓谷と東沢渓谷は、山梨県の笛吹川の源流部に位置し、美しい自然景観と豊かな水資源を有する渓谷です。この地域は秩父多摩甲斐国立公園に含まれ、特に紅葉の時期には多くの観光客が訪れます。
西沢渓谷と東沢渓谷は、山梨県北部の山梨市に位置しており、広瀬湖(広瀬ダム)の上流に広がっています。このエリアは、南に黒金山、西に国師岳、北奥千丈岳、北に甲武信ヶ岳、鶏冠山を望む風光明媚な場所です。渓谷は西滑山(標高2086m)の最裾部で東沢渓谷と西沢渓谷に分かれており、東沢渓谷は甲武信ヶ岳・国師ヶ岳を水源とし、西沢渓谷は国師ヶ岳・奥千丈岳を水源としています。
両渓谷は位置的に分かれているわけではなく、北西に東沢渓谷、南西に西沢渓谷が延びています。それぞれの渓谷には異なる景観や特徴があり、訪れる人々に多様な自然の美しさを提供します。
西沢渓谷には、滝や淵が連続して続く絶景のトレッキングコースが整備されており、軽装で訪れてもその美しさを堪能できます。特に、コースの最奥部にある「七ツ釜五段ノ滝」は、日本の滝百選にも選ばれており、渓谷を訪れる多くの人々が足を運ぶ場所です。この滝は五段にわたって流れ落ちる姿が特徴で、見応えがあります。
秋になると渓谷全体が鮮やかな紅葉に染まり、まさに絶景が広がります。四季を通じて様々な表情を見せる西沢渓谷ですが、特に秋の紅葉シーズンは多くの観光客で賑わいます。トレッキングコースは安全のため反時計回りの一方通行が推奨され、最奥部からの帰路には、森林鉄道跡を利用した緩やかな道が用意されています。
東沢渓谷は、二俣吊橋から北上する形で始まります。吊橋を渡った先が入渓点となり、ここからは沢登りの技術が必要です。一般のハイカーが安易に立ち入ると危険が伴うため、「立入禁止」の警告が掲げられています。
入渓すると、まずは平坦な河原歩きが続きますが、少し進むとゴルジュと呼ばれる深い峡谷が現れます。ゴルジュ帯を越えるための登山道が整備されており、これを利用して安全に進むことが可能です。また、東沢渓谷では法螺貝の内部のような螺旋状のゴルジュ「ホラノ貝」や、「山の神」と呼ばれる祠も見どころの一つです。
さらに渓谷を進むと、冬季には氷瀑となる「乙女の滝」や、東のナメ、西のナメといった美しいスラブの景観が楽しめます。このエリアはクライミング愛好家にも人気があり、多くの人が訪れます。
東沢渓谷の奥には、釜ノ沢が広がり、さらに奥に進むと魚留の滝、千畳のナメ、両門ノ滝、ヤゲンの滝など、数々の美しい滝が連続して現れます。最上流部まで遡行すると甲武信小屋に到達し、登山者の休憩スポットとしても利用されています。
山梨市街からは国道140号を北上し、広瀬湖の手前にある渓谷の入口までアクセスが可能です。渓谷入口付近には、ドライブインや「西沢山荘」、道の駅「みとみ」があり、さらに埼玉県秩父市へ抜ける「雁坂トンネル」の入口も見えます。
山梨市駅から山梨市営バスに乗り、西沢渓谷入口で下車します。シーズン中は、塩山駅からも甲州市市民バスの臨時便が運行され、アクセスが便利です。また、旧鉱山鉄道および森林鉄道の廃線跡を利用した散策道が整備されており、渓谷内には橋脚や遺構が点在しています。
西沢渓谷の南側にある旧森林鉄道部分は、冬季通行止め規制がかかるため、冬季シーズンには十分な確認が必要です。
西沢渓谷と東沢渓谷は、その豊かな自然と美しい景観から、登山や渓谷散策が好きな方々にとって非常に魅力的な観光地です。特に秋の紅葉や冬の氷瀑は一見の価値があり、訪れる人々に癒しと感動を提供してくれるでしょう。