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差出の磯

(さしで いそ)

差出の磯は、山梨県山梨市の中心部、笛吹川沿いに位置する景勝地で、古来より多くの歌人が和歌を詠んだ場所として知られています。差出の磯は、突き出た岩山が海辺の磯を彷彿とさせることからその名がつけられました。また、笛吹川の流れを緩める自然の堤防としての役割も果たしています。

差出磯大嶽山神社

差出の磯の山上には「差出磯大嶽山神社」が鎮座しており、地域の人々から崇敬を集めています。神社からは、山梨市の景観が一望でき、特に春や秋の風景は絶景です。2005年には、国土交通省の「関東富士見百景」に指定され、その美しい景観が評価されています。

差出の磯と笛吹川と亀甲橋

差出の磯は、笛吹川沿いの万力公園の北東部に位置し、周囲には兄川や弟川が流れています。亀甲橋からの眺望もまた見事で、差出の磯と川が織りなす美しい景観を楽しむことができます。こうした風景は、訪れる人々に自然と歴史の豊かさを感じさせるでしょう。

和歌に詠まれた差出の磯

差出の磯は、『古今和歌集』をはじめとする数多くの和歌に詠まれています。例えば、「しほの山差出の磯にすむ千鳥君が御代をば八千代とぞなく」という歌は、平安時代からこの地が和歌の題材として愛されてきた証といえるでしょう。江戸時代には松尾芭蕉、昭和初期には与謝野晶子夫妻などの著名な歌人も訪れ、その美しさに魅了されました。

主な和歌の紹介

差出の磯に関連する和歌のいくつかをご紹介します。

和菓子と差出の磯

江戸時代には和歌を題材にした和菓子が数多く生まれ、夏の和菓子として「さしでの磯」が作られました。この和菓子は、『古今和歌集』の歌に基づいて、茶色い餡でせせらぎ、白い餡で川岸、小豆で千鳥を表現しています。また、滋賀県大津市の「汐美饅頭」も、この和歌から着想を得た歴史ある和菓子で、茶道や慶弔の場で利用されています。

旧青梅街道と差出の磯

かつて笛吹川沿いの道は旧青梅街道として栄え、現在の国道140号が整備されるまでは主要な交通路として機能していました。この街道沿いには、多くの旅人や商人が行き交い、その歴史的背景が今も感じられます。

差出小唄

差出の磯に関連した民謡「差出小唄」には、この地への想いが込められています。

差出ふたまた左は青梅
思案に暮れます右秩父
小原古い町花の町トコドッコイ
小荷駄の鈴の音

深沢七郎と差出の磯

小説『楢山節考』で知られる深沢七郎は、彼の作品『笛吹川』の中で、差出の磯を描写しています。この中で登場する「ギッチョン籠」は、かつて川沿いにあった建物「みずや」がモデルとなっており、1988年に解体されるまでその姿を残していました。

差出の磯の訪問方法

山梨市の中心部から徒歩や車でアクセスが可能で、周囲には駐車場も整備されています。春には桜、秋には紅葉が美しく、季節ごとに異なる景観を楽しめるため、年間を通じて多くの観光客が訪れます。

Information

名称
差出の磯
(さしで いそ)

勝沼・石和温泉

山梨県