ルミエール旧地下発酵槽は、山梨県笛吹市一宮町南野呂にある、 日本最古のヨーロッパ型横蔵式ワイン醸造専用の地下発酵槽です。この施設は、1901年(明治34年)に建築され、 半地下貯蔵庫としての機能も兼ね備えています。 1998年(平成10年)には「再現することが容易でないもの」として、国の登録有形文化財に登録されました。
ルミエール旧地下発酵槽は、甲府盆地東部に広がる京戸川扇状地の中腹に位置し、周囲をブドウ畑に囲まれた 標高約360メートルの斜面に立地しています。この地域は水はけが良く、ブドウ栽培に適しているだけでなく、 地下水を利用した冷却効果も得られるため、ワイン醸造の地として理想的でした。
ワイナリーの創業は1885年(明治18年)。降矢徳義によって「降矢醸造所」として始まり、後に企業体へ改組され、 その後「甲州園」として知られるようになりました。1992年には現在の社名「ルミエール」に変更されました。
2代目当主である降矢虎馬之甫がヨーロッパ式の石蔵発酵槽を参考に設計し、1901年(明治34年)に建設。 扇状地の地形を活用して造られたこの施設は、日本初のヨーロッパ型ワイン醸造専用施設として注目されました。 神谷傳兵衛の指導を受けたことも、この施設の設計に大きく寄与しています。
地下発酵槽は、耐酸性に優れる花崗岩を用いて構築されており、10基の長方形の発酵槽が横並びに配置されています。 1基あたりの大きさは幅1.65メートル、奥行き3.6メートル、高さ2.25メートルで、1基で約1万リットルの醸造が可能です。 全基を使用すれば、一度に10万リットル以上のワインを醸造できる規模を誇ります。
発酵槽の前面には、各発酵槽からワインを取り出すための地下通路があり、この通路は普段セラーとして使用されています。 また、地下通路から北側に続くコンクリート製の地下セラーには、約300樽のワインが貯蔵されています。
発酵槽の仕込みには竹を用いたすのこを設置し、房ごと潰したブドウを投入して発酵させる方法が採られていました。 この伝統的な手法は金属製タンクの普及と共に姿を消しましたが、1998年の文化財登録を機に復活しました。 ここで醸造されたワインは「石蔵和飲」として販売されています。
ワイナリーショップの見学は自由ですが、旧地下発酵槽の見学は事前予約が必要です。 現地で実際に施設を体験することで、明治期から続くワイン醸造の歴史に触れることができます。
ルミエール旧地下発酵槽は、日本のワイン醸造の歴史を語る上で欠かせない重要な施設です。 明治期の先進的な技術と日本独自の醸造文化が融合したこの施設は、訪れる人々に感動と知識を提供しています。 山梨県を訪れる際にはぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。