茅ヶ岳は、山梨県にある標高1,704mの山で、北杜市と甲斐市にまたがります。この山は奥秩父山地の南西部に位置し、20万年前後に活動した安山岩の複成火山が侵食されて形成されたものです。火山体には金ヶ岳峰も含まれており、東側は黒富士火山群と接しています。
茅ヶ岳は、日本百名山の著者である小説家・深田久弥が登山中に脳卒中で急逝した山としても有名です。1971年(昭和46年)3月21日にこの山で亡くなった深田久弥を偲んで、山麓には深田記念公園が設立されました。地元の韮崎市と白鳳会によって毎年4月には「深田祭」が開催され、多くの登山者が訪れます。
茅ヶ岳の山頂からは、奥秩父の主脈や甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山といった南アルプスの雄大な山々が見渡せ、登山者に人気のある絶景スポットです。さらに、茅ヶ岳と金ヶ岳は、甲府盆地から眺めると八ヶ岳に似た山容を持つため、江戸時代後期の地誌『甲斐国志』や『甲斐叢記』では八ヶ岳と混同されることもあり、「ニセ八ツ」としても知られていました。
茅ヶ岳への一般的な登山ルートは、JR中央本線の韮崎駅からバスで柳平まで行き、そこから登山を開始する方法です。通常のルートでは、金ヶ岳を経由して明野村(現・北杜市)に下山するか、南に進んで防火線をたどり、深田記念公園へと出ることができます。後者のルートは、マイカーを使用する場合に便利です。
穂坂町柳平から茅ヶ岳山頂までの登山時間はおおよそ3時間30分です。登山初心者から上級者まで楽しめるコースとなっており、体力に自信のある方は金ヶ岳を経由した縦走もおすすめです。
「茅ヶ岳」という名前は、「カヤ(茅)の多い原の上に立つ峰」という意味があるとされています。この名前には、この山の自然の美しさと植物が豊かな景観が反映されていると言えるでしょう。
茅ヶ岳の山麓には、深田久弥を記念する深田記念公園があり、毎年4月下旬には「深田祭」が催されています。この公園には、深田久弥の言葉「百の頂に百の喜びあり」が刻まれた文学碑が建てられており、訪れる人々にその思想を伝え続けています。
深田記念公園の西側には「饅頭峠」と呼ばれる場所があります。ここは、御岳詣りの道の1つであり、昔話に登場する伝説の地でもあります。かつてこの地には茶店があり、老婆が店番をしていました。ある日、六部(巡礼者)がやってきて饅頭を所望しましたが、老婆は「これは石だから食えない」と言って断ったそうです。六部が立ち去った後、その饅頭は本当に石になったという伝説があり、現在でもこの地から饅頭のような形をした石が発見されることがあります。これらの石は、火山灰が付着した溶岩の小礫が科学変化してできたものと考えられています。
茅ヶ岳と連なる山である金ヶ岳も人気のある登山スポットです。茅ヶ岳から金ヶ岳への縦走は、登山愛好家にとって充実感のあるコースとして親しまれています。
茅ヶ岳の中腹には深田久弥終焉の地があり、訪れる登山者たちはここで彼の偉業を偲びます。この地には、深田久弥の文学碑もあり、多くの人が足を運んでいます。
茅ヶ岳からは富士山の絶景も楽しむことができ、特に赤岳山頂からは富士山と茅ヶ岳が一望できるため、写真撮影スポットとしても人気があります。
茅ヶ岳の北東に位置する大日岩からも、美しい茅ヶ岳と遠景の南アルプスを望むことができます。特に晴れた日には、広がる山々の景色が絶景となり、登山客に人気の場所です。
茅ヶ岳へのアクセスは、JR中央本線韮崎駅が最寄りの駅となります。そこからバスを利用して柳平まで行くことができます。車で訪れる場合は、韮崎インターチェンジから約30分程度で登山口までアクセス可能です。
茅ヶ岳の登山を楽しむ際には、韮崎市や北杜市周辺に宿泊することが便利です。これらのエリアには、登山者向けの宿泊施設や温泉旅館も多くあり、登山の疲れを癒やすのに最適です。
茅ヶ岳一帯は、豊かな自然と文化が融合した場所です。山麓は利水に乏しく、古代には穂坂牧や小笠原牧といった官牧が設置され、また江戸時代には楯無堰や大垈堰が開削されて新田開発が行われました。こうした歴史も茅ヶ岳の魅力の一つです。
茅ヶ岳は、その自然美と歴史、文化が豊富に詰まった山です。登山を通じて美しい景色を堪能するだけでなく、深田久弥の足跡や昔話の伝説に触れることができるのも魅力の一つです。春には「深田祭」が行われ、多くの人々が茅ヶ岳に足を運びます。登山者にとって、茅ヶ岳は単なる山ではなく、多くの物語が詰まった場所といえるでしょう。