塩澤寺は山梨県甲府市にある真言宗智山派の寺院で、厄除け地蔵尊を祀ることで有名です。毎年2月13日から翌14日にかけて開催される「厄除け地蔵尊大祭」には、多くの参拝者が訪れ、「厄地蔵さん」として地元に親しまれています。
塩澤寺は「福田山」の山号を持ち、厄除けと開運のご利益を求めて、多くの人々に信仰されています。この寺院は、湯村山の南麓に位置し、近くには「信玄の湯 湯村温泉」があります。
山梨県甲府市にある塩澤寺は、アクセスも良好で、歴史と自然に触れる観光地としても人気です。
塩澤寺は大同3年(808年)、真言宗の祖である弘法大師(空海)が開山したと伝わります。空海は日本各地を行脚し、厄除け地蔵尊の霊験に感動し、自ら六寸(約20センチ)の地蔵菩薩像を彫刻して開眼しました。この像が塩澤寺の歴史の始まりとされています。
その後、天暦9年(955年)、踊念仏で知られる高僧・空也上人が巡礼中に塩澤寺を訪れ、地蔵尊の霊験を感じて六尺(約2メートル)の地蔵菩薩像を建立しました。この時から寺は「福田山塩澤寺」と称されるようになりました。
さらに鎌倉時代の文永3年(1266年)、臨済宗建長寺派の祖である蘭渓道隆(らんけい どうりゅう)禅師が塩澤寺に逗留し、堂宇を整備して寺の基盤を築きました。
江戸時代、徳川家光の治世である1643年には、御陽成天皇の第八皇子・良純親王が湯村の地に幽閉されました。良純親王は地蔵尊に深く帰依し、寺の縁日(現在の大祭)を盛んにしたと伝えられ、塩澤寺の興隆に寄与しました。
塩澤寺には、多くの歴史的価値のある文化財が残されています。地蔵堂や無縫塔、石造地蔵菩薩坐像などがあり、訪れる人々に歴史の重みを感じさせます。
昭和24年2月18日に国の重要文化財に指定された地蔵堂は、室町末期に建立され、江戸時代初期の建築様式が見られます。この建物は、その独自の建築美で訪れる人を魅了します。
昭和46年4月8日に山梨県の有形文化財に指定された無縫塔は、地蔵堂近くに三基並んで立っています。そのうち右端の塔は、安山岩で作られており、高さは約1.3メートルです。基礎部分には花が彫刻され、応永7年(1374年)の刻銘があります。
昭和35年11月7日に山梨県指定有形文化財となったこの坐像は、地蔵尊の信仰の象徴として訪れる人々に拝され続けています。
昭和48年7月12日に指定された阿弥陀種子板碑は、高さ2.15メートル、幅1メートルで、阿弥陀如来の種子が刻まれた石碑です。この碑は、貞和6年(1350年)の年号が刻まれており、時代の風格を今に伝えています。
昭和40年5月13日に山梨県の天然記念物に指定された「舞鶴のマツ」は、明治時代には「甲府の三名松」と称され、多くの人々に愛されてきました。その優雅な姿は、訪れる人々に自然の美しさを伝えています。
昭和62年3月31日に甲府市の天然記念物に指定されたシラカシ林も、塩澤寺の見どころの一つです。境内に広がる豊かな緑は、参拝者の心を和ませます。
塩澤寺へのアクセスは便利で、JR中央本線の甲府駅から徒歩やバスで向かうことができます。車でのアクセスも可能で、中央自動車道の甲府昭和インターチェンジから昇仙峡・湯村方面に進むと訪れることができます。
塩澤寺の周辺には、温泉地で有名な「信玄の湯 湯村温泉」があり、温泉でゆっくりとくつろぎながら、地域の歴史に触れることができます。また、山梨県の文化財巡りの一環としても、塩澤寺は見逃せない観光スポットです。