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神田の大イトザクラ

(しんでん おおイトザクラ)

神田の大イトザクラは、山梨県北杜市の松向・神田地区(旧北巨摩郡小淵沢町)にあるエドヒガン系のシダレザクラの一本桜の巨木です。この美しい桜は山梨県の天然記念物に指定され、多くの観光客や写真愛好家を魅了しています。

概要

神田の大イトザクラの推定樹齢は400年以上とされ、1959年(昭和34年)2月9日に山梨県の天然記念物に指定されました。例年4月中旬から下旬にかけて開花し、背後には南アルプスや八ヶ岳の残雪が広がる美しい風景が楽しめます。毎年多くの人が、この桜を背景にした絶景を撮影しに訪れます。

特徴と景観

神田の大イトザクラは標高約820メートルの棚田の畦にあり、田んぼの真ん中に位置する見晴らしの良い一本桜です。幹の周囲は7.5メートル、樹高9メートル、東西・南北の枝張りは20メートルにも及び、四方に広がる枝が傘のように垂れ下がる優雅な姿を見せています。山梨県内では最大級の枝垂れ桜として知られ、その姿は春の風物詩となっています。

周囲の湧水帯と稲作

八ヶ岳南麓には名水百選に選ばれた「八ヶ岳南麓高原湧水群」が広がり、古くから湧水を利用した水田が発展してきました。神田地区でも中世以降、この湧水を使った稲作が行われ、神田の大イトザクラは神社への供米を作付けするための神田に、御神木として植えられたと伝わっています。

桜の開花と農作業の関係

昔は暦がない時代、この桜の開花が農作業開始の目安となり、桜の咲き具合でその年の豊作を占う風習もありました。神田地区では「花が一斉に咲く年は豊年なり」という言い伝えがあり、地域の生活や農業に深く結びついた存在でした。

観光地としての人気

1959年に天然記念物に指定されたものの、当初は地元以外にはほとんど知られていませんでした。しかし1975年に水上勉の著書『わが草木記』で紹介され、次第にその存在が広く知られるようになりました。現在では開花期に多くの観光客や写真愛好家が訪れる山梨県を代表する桜の名所として知られています。また、中央本線の長坂駅と小淵沢駅の間に位置しており、列車からもその美しい姿を見ることができます。

樹勢回復への取り組み

近年、神田の大イトザクラは樹勢が衰え、枯れ枝が目立つようになってきました。旧小淵沢町時代から桜の周囲に柵を設け、根元が踏み固められないように保護されてきましたが、十分な効果が得られない状況が続いていました。

樹勢回復事業の開始

北杜市合併後の2008年、北杜市教育委員会は「神田の大糸ザクラ樹勢回復等検討委員会」を設置し、専門家による現状調査と改善策の検討を行いました。2009年からは4カ年計画で樹勢回復事業が本格的に開始されました。

土壌改良と不定根誘導

樹勢回復のための取り組みは主に土壌改良と不定根誘導が主体です。土壌改良は根の広がる範囲を8分割し、1年ごとに対角線上の2カ所で順次実施しています。不定根誘導は幹から出る根を土中に誘導し、木全体に養分が行き渡るようにする方法です。

防風ネットの設置

2010年には桜の北側と西側に防風ネットが設置されました。このネットは、冬季に八ヶ岳おろしと呼ばれる冷たい強風によって、老木である桜の花芽や葉が落とされるのを防ぐためのものです。現在では年間を通じて設置され、桜の保護に貢献しています。

列車とのコラボレーション

特急「あずさ号」と神田の大イトザクラの組み合わせも見どころです。春の開花時には桜と列車が美しい景観を作り出し、多くの人がその瞬間を写真に収めようと集まります。

所在地とアクセス

神田の大イトザクラは山梨県北杜市小淵沢町松向2767に位置しています。

電車でのアクセス

JR中央本線・小海線の小淵沢駅で下車し、北杜市民バス北部巡回線で約10分、「原村」バス停で下車後徒歩10分、または小淵沢巡回線で約12分、「神田北」バス停で下車後徒歩約5分です。

車でのアクセス

中央自動車道の小淵沢インターチェンジから車で約15分でアクセスできます。

Information

名称
神田の大イトザクラ
(しんでん おおイトザクラ)

清里・小淵沢

山梨県