古長禅寺のビャクシンは、山梨県南アルプス市鮎沢にある国の天然記念物に指定された4本のビャクシン(イブキ)の老樹です。これらの樹木は臨済宗妙心寺派の寺院である古長禅寺にあり、その歴史とともに地域の信仰と文化に深く根付いています。
ビャクシン(柏槇)はヒノキ科ビャクシン属の常緑高木で、正式名称はイブキ(伊吹、学名:Juniperus chinensis)です。全国的にも珍しい樹種であり、国の天然記念物に指定されているビャクシンは日本国内でわずか10件しか存在しません。その中で、古長禅寺のビャクシンは貴重な一例とされています。
古長禅寺のビャクシンは、同寺の開山当時、四天王をかたどる形で客殿の前庭の4隅に植えられたと伝えられています。これらの樹木は約600年から650年の樹齢を持ち、1953年(昭和28年)11月14日に国の天然記念物に指定されました。
古長禅寺は甲府盆地西部の釜無川右岸と櫛形山の中間、標高約260メートルの平坦地に位置します。武田信玄の生母、大井夫人の墓所があることでも有名で、歴史的にも重要な寺院です。寺の南側を東西に走る市道を挟み、古長禅寺の「お釈迦堂」と呼ばれる飛び地に4本のビャクシンが配置されています。
以下に、各ビャクシンの特徴を示します。
地上から東西2つの幹に分かれており、根回り幹囲は東側が4.40メートル、西側が2.35メートル、樹高は約10.9メートルです。
地上1メートル付近で4つの幹に分かれ、根回り幹囲は6.30メートル、樹高は約16メートルです。
単幹であり、根回り幹囲は4.05メートル、目通り幹囲は3.70メートル、樹高は約10.9メートルです。
地上付近で東西2つの幹に分かれ、根回り幹囲は5.20メートル、樹高は約14メートルです。
古長禅寺のビャクシンは、長い年月をかけて人々の信仰の対象として守られてきました。江戸時代に編纂された『甲斐国志』には、夢窓国師が開創し、客殿前の4隅に植えたと記されています。これらのビャクシンは四天王を象徴し、護摩焚きをして国家安寧を祈願するための場所ともされていました。
ビャクシンの周囲には、1845年(弘化2年)の庚申塔や1837年(天保8年)の観世音菩薩像、さらに宝永・宝暦年間に建立された経石などが残されています。これらの石造物は、当時の人々の信仰を示すものとして大切に保管されています。
これらのビャクシンは数世紀にわたり、台風や大雪などの自然災害に何度も見舞われましたが、そのたびに修復や保護が行われてきました。山梨県や地元の住民によって大切に守られ、手厚い保護が行われています。
山梨県南アルプス市鮎沢505
電車:JR身延線「東花輪駅」下車、車で約15分。
車:中部横断自動車道「南アルプスインターチェンジ」より車で約5分。
古長禅寺のビャクシンは、歴史的な背景と自然の偉大さを感じることができる貴重な観光地です。訪れる際には、自然を尊重し、長い年月をかけて守られてきた文化財としての価値を感じてください。