せいだのたまじは、山梨県上野原市の棡原(ゆずりはら)地区に古くから伝わる郷土料理で、小粒のじゃがいもを味噌味で甘辛く煮た「煮転がし」の料理です。素朴な味わいながら栄養があり、昔の人々の知恵と歴史が詰まった伝統食として知られています。現在では上野原を代表する郷土料理の一つとなっており、地域の食文化を伝える大切な料理として受け継がれています。
「せいだのたまじ」という名前は、江戸時代の代官であった中井清太夫(なかい せいだゆう)という人物に由来しています。江戸時代後期、日本では天明の大飢饉や天保の大飢饉が起こり、多くの人々が食べ物に困っていました。
そこで甲府の代官だった中井清太夫は、江戸幕府の許可を得て九州からじゃがいもの種芋を取り寄せ、村人に栽培させました。じゃがいもはやせた土地でも育ちやすく、保存もできるため、食料不足に苦しんでいた人々を救うことになりました。この功績をたたえて、棡原地区ではじゃがいもを「清太夫芋」や「清太芋」と呼ぶようになり、これがなまって「せいだ」と呼ばれるようになったといわれています。
また、「たまじ」とは小さなじゃがいものことを意味し、小粒のじゃがいもを無駄にせず食べるために作られた料理であることから、「せいだのたまじ」という名前になりました。
せいだのたまじが伝わる棡原地区は、山梨県の最東端に位置する山間の地域で、山や川に囲まれた自然豊かな場所です。この地域は昔から長寿の村として知られており、多くの人が健康で長生きする地域として研究対象にもなりました。
棡原では、雑穀や野菜、芋類、豆類などを中心とした質素な食生活が続いており、肉や脂っこい食事は少ない生活でした。このような食生活と、山道を歩いたり畑仕事をしたりする日常生活が、健康で長生きする理由の一つと考えられています。せいだのたまじも、このような昔ながらの食生活の中で生まれた料理です。
せいだのたまじは、小粒のじゃがいもを皮付きのまま油で炒め、味噌や砂糖、みりんなどで甘辛く煮込んで作ります。皮が薄い新じゃがいもを使うと特に美味しいため、春から夏にかけてよく作られる料理です。
皮付きのまま調理することで栄養を無駄なく摂ることができ、保存もきくため、昔の人々にとってはとても大切な食べ物でした。素朴でやさしい味わいが特徴で、ご飯のおかずとしてだけでなく、お茶うけとして食べられることもあります。
まず、小粒のじゃがいもをよく洗い、水気を拭き取ります。その後、油を熱した鍋で皮付きのままじゃがいもを炒めます。別の鍋に移して水やだし汁を入れて煮込み、沸騰したら味噌、砂糖、みりんなどを加えてさらに煮込みます。
煮汁が少なくなり、じゃがいもに味がしっかりしみ込んだら完成です。仕上げにごまを振りかけると、香ばしさが加わりより美味しくなります。
現在でもせいだのたまじは各家庭で作られているほか、スーパーマーケットの惣菜コーナーや土産店などでも購入することができます。また、郷土料理を味わえる施設などでも提供されており、観光で訪れた人も食べることができます。
学校給食で提供されることもあり、子どもたちに料理の名前の由来や歴史を伝えるなど、郷土文化を次の世代へ伝える取り組みも行われています。
せいだのたまじは、山梨県が次世代へ伝えていく郷土料理として認定している「やまなしの食」に選ばれています。その中でも特に代表的な料理として「特選やまなしの食」にも選ばれており、山梨県を代表する郷土料理の一つとなっています。
上野原市を訪れた際には、自然や歴史ある観光地を巡るだけでなく、このような郷土料理を味わうことも大きな魅力の一つです。せいだのたまじは、地域の歴史や人々の暮らし、食文化を感じることができる料理です。
昔の人々が飢饉を乗り越えるために工夫して作った料理が、現在では地域の名物として親しまれていることは、とても興味深いことです。観光で訪れた際には、ぜひこの伝統的な料理を味わい、上野原の歴史と文化を感じてみてください。
せいだのたまじは、小粒のじゃがいもを味噌味で煮たシンプルな料理ですが、その背景には江戸時代の飢饉を救った歴史や、長寿の村と呼ばれた棡原の食文化が深く関わっています。地域の人々の知恵と工夫によって生まれ、現在まで受け継がれてきた大切な郷土料理です。
上野原を訪れる際には、観光地を巡るだけでなく、せいだのたまじなどの郷土料理にも触れ、地域の歴史や文化をより深く知る旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。